「先生のお噂はかねがね母より伺っております」
さて、この言い方は敬語として正しいでしょうか。
先生と話しているのだから「伺う」という謙譲語を使っているのでしょうが、この場合の「伺う」は適切ではありません。
その理由は、この「伺う」は「母」にかかっているからです。
他人と話すときに、身内に謙譲語を使うことは正しい敬語ではありません。
「先生のお噂はかねがね伺っております」
という使い方あれば問題ありません。または
「先生のお噂はかねがね母より聞かされております」
などという言い方もできます。
他社の人と話す際の社内の人間に対しても同じことが言えます。
間違ってもお客様に「○○様へは私から上司に伺って返答させていただきます」などと言わないように気をつけましょう。
では、お客様に電話で訪問の約束をする際に「私が伺います」という使い方は正しいでしょうか?
正解は「正しい」です。
一見自分に対して謙譲語を使っているように見えますが、この場合は暗黙で「お客様の家へは私が伺います」というお話になっており、「伺う」は「お客様の家」、つまり「伺う先」にかかっているからです。