IT業界が「ブラック」といわれる問題点

IT業界が「ブラック」といわれる問題点

IT業界は「ブラック企業」と呼ばれる会社が多かったり「ブラックな噂」があふれていたり、「3K」ならぬ「7K」ビジネスなんていう人もいるようです。ここではIT業界がなぜそのようにいわれるのか、その問題点を簡単にご紹介します。

IT業界の問題点

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某巨大掲示板発の話で、それが映画にもなり、一躍「ブラック会社」なる言葉が取りざたされた事は記憶に新しいと思います。


IT業界、特にソフトウェア開発(Webシステム開発を含む)は昔から「新3K」=「きつい」「厳しい」「帰れない」と言われていました。(ちなみにそれより前の「3K」は「危険」「汚い」「きつい」)


なぜIT業界はきつくて、厳しくて、帰れない業界といわれるのでしょうか?


ソフトウェア開発などの仕事では、肉体労働的な筋肉が疲労困憊したり、機械の事故などで死傷するような状況になることはまずないのですが、精神的に圧迫されて不安定になり、それに加えて連日の長時間残業による睡眠不足や食事時間の乱れが加わり、肉体的にも疲れ果てていくケースがよく見られるようです。


精神を圧迫していくのも、残業になるのも、最終的には「納期」=「時間」との戦いが大きな原因です。


ビジネスである以上、納期があるのは当然のことなのですが、IT業界だけなぜこのような状況になるのでしょうか。

その原因の大きなファクターは、IT業界の仕事の見積もりの難しさにあります。


建築業や他の製造業は、これまでに培ってきたノウハウから、新しい商品・製品を設計・製造する際にも、かなり精度の高い見積もりを出すことが可能です。


しかしソフトウェアの場合、見積もり手法はいくつか確立されていますが、その見積もりの精度は必ずしも高いとはいえません。

その理由は、「上流工程で顧客から要望のなかった仕様が、プロジェクト終盤に必須の仕様として次々に追加される」「参考にした過去の実績が正確でない」「そもそも過去の実績の積み重ねが足りない」「次々に出てくる新技術に対応しなければならないため、正確に見積もれない」「プロジェクトごとに予想もしなかった問題点が出てくる」など、色々あります。


そして、そのような状況で算出された見積もりというのは、たいていの場合実体より小さな規模になりがちです。更にこの不況で、顧客はただでさえ控えめな見積もり金額を更に値引き交渉してきます。


その結果、プロジェクトは最小規模の人数、あるいは人数不足で、かつ初めから無理のある期間に設定されて開始されることになります。



IT業界の構造上の問題とブラックな展開

IT業界が「ブラック」といわれる問題点[この世の掟.com]

更に問題が大きくなるのは、IT業界の構造です。

IT業界の1案件あたりの売上は、決して小さくありません。ちょっとしたシステム開発でも数千万円、ちょっと規模の大きなシステムなら数億〜数十億円のお金がかかる世界です。


よって、経済的な体力がない小さな開発会社では「納品してから代金をもらう」というようなスタイルはとてもではありませんが無理な話です。

その結果、誰もが知っているような家電メーカー系など、大きな会社が元請けにならざるを得なくなります。

そして、そのような大きな会社には往々にして研究開発部門こそあれど、現場で開発に従事するような開発担当者は不在で、マネージメント専門の社員ばかり、ということが多いのです。


実際には、その元請けの大企業が系列子会社に開発を委託し、さらにその系列子会社が中小ソフトウェア開発会社に対して開発者を求め、さらに更にその中小企業が零細ソフトウェア会社から開発者を引っ張るという、根の深い構造になることは珍しいことではありません。


そして元請け会社や系列子会社のメンバーは営業(顧客との商談)やプロジェクトマネジメントに従事することが多いので、実体としてのソフトウェア開発は中小企業以下のメンバー中心で行うことになり、見積もりの甘さや仕様変更・追加によるあおりの大部分をこのメンバーが受けて疲弊することになるのです。


さらに、この構造は金銭的にも問題となります。

例えば、元請け会社が顧客に出した見積もりでは、開発メンバー1人の1ヶ月の費用が150万円で提出していたとします。それを系列子会社に委託するする際は1人1ヶ月あたり100万円で見積もらせます。差額の1人1ヶ月あたりの50万円は、元請け会社の粗利となります。そして同じ公式で系列会社が中小企業から1人1ヶ月あたり70万円とか80万円で開発者を借りて、中小企業は不足しているメンバーを零細企業から40万円とか50万円で引っ張ってくるわけです。


そうなると、下っ端のメンバの給料など、どう頑張っても20万とか30万円くらいにならざるを得ず、酷使された割には安い給料となってしまうのです。


開発しても開発しても繰り返される仕様変更、疲労がピークに達し、その影響で噴出したバグの嵐。

その実体をごまかして、少しの遅れのように報告し、そして取り返しようのない遅れを「取り返せ!」と怒号する上層部。

ストレス、寝不足、栄養不足、運動不足により、苛立ち、胃が痛み、眩暈がし、それでも明日の朝イチの進捗報告につじつまを合わせるために今日も徹夜で作業。


こうしてIT業界のブラックな噂がまたひとつささやかれるようになるわけです。


※IT業界のすべての現場がこうなっているわけでは当然ありません。無理があったり矛盾があったり問題があったりするのに、それを抜本的に解決せずに「とりあえず進める」体質の組織・プロジェクトが、このような状況になりやすいといえます。

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